渓流魚の素早いバイトを確実に掛けるために開発されたトレブルフック「TIMON トラウティントレブルBL」

2025年の釣りフェスティバルで公開後、各ショーにて見て触っていただいた方はその危険なほどの絡みつきに驚かれたのではないでしょうか。
この特徴的な形状は、ネイティブトラウトの一瞬のバイトを絡めとるための設計が随所に施されています。
今回はその設計思想を紐解きます。
完全バーブレス仕様
まず最も象徴的な特徴として”バーブレス”であること。

キャッチ&リリースとは、魚を釣った後に元の水系に放ち、今後も生き延びていってほしいという考え方に他なりません。
バーブレスであろうがバーブドであろうが、魚にフックを刺してしまうことには変わりはないのですが、バーブレスフックを使用した場合の方が、リリースした魚の生存率は劇的に高まるのです。
バーブドフックの抜けにくさは、バーブ先端のエッジによる魚の組織への刺さり込みであり、抜こうとするときはその組織を破壊しながら抜けてくることになります。
多くの毛細血管や神経をバーブが破壊しながら抜けてくるわけですが、水中で生きている魚にとって、太めの血管が損傷した場合の出血は致命的で、凝血する前に出血して死に至る場合も多々あるようです。
バーブレスの場合は刺さりこんだ部分の組織を排除しながら刺さるだけで、抜くときには組織への破壊はほとんどありません。また、ストリームのミノーイングにおいては、目玉やエラといった、バーブドフックが刺さりこんだだけで致命傷になる部分へのフッキングも多いものですが、バーブレスであればそれら脆弱な組織からフックオフする際にも最小限の負担で済みます。
バーブレスの安全性
魚に対してのみならず、アングラー側にやさしいこともバーブレスフックの長所です。
ちょっとした遡行であれば、ルアーをフックキーパーやバットガイド、リール付近などに引っかけた状態で移動して、ベストなどのウェアー類にフックを引っかけてしまった方も多いのではないでしょうか。
また、クレモナの組糸で編み込まれたランディングネットで魚をすくい、フックがクレモナに刺さりなかなか抜けずに困られた方、最悪の事故として、魚の口元についたルアーが指や手の甲などに刺さり、痛い思いをされた方もいらっしゃることでしょう。
これらの事故も、バーブレスであればスッと抜いてすぐに次のキャストに移ることができるのです。
渓流魚に合ったフック形状とは
日本のストリームミノーイングでは主にヤマメ・アマゴ、そして数種類のイワナ属を狙うことになりますが、特にヤマメ・アマゴのバイト数に対するランディング率はタックルへの依存度が非常に高いと言えます。
特に大物実績の高いアップストリーム方向へキャスト&リトリーブされる場合、ロッドにかかるルアー抵抗は非常に少なく、魚がバイトして一旦は浅くフッキングしても、深いフッキングにつなげられずフックオフしてしまうのはよくあることです。
この現象を少しでも解消するため、魚の最初の首振りによるルアーのわずかな浮力や抵抗をフッキングパワーに変え、言わばアングラーへのフッキングの仲介を担うフックが必要と考えました。
今までは『まぁ、今のはしょうがない。』というヤマメも、フックが絡めとり、深いフッキングにまでつながる可能性を向上させたかったのです。
アプローチアングルの妙
アプローチアングル=フックが魚の口にどう向かって掛かるか、その方向
この『ヤマメを絡めとるフック』を実現するには、フック設計では最も重要と言える要素であるアプローチアングルの調整が重要です。

基本的にはアプローチアングルが小さくなればなるほど少ないフッキングパワーで刺さりこみやすく、いわゆる”向こう合わせ”が発生しやすくなります。
また、逆にアプローチアングルが大きくなればなるほど、アングラー側による強いフッキングパワーが必要になります。
では、『どんなフックでもアプローチアングルを小さくすればよいでは?』と考えてしまいますが、一概にはそうならないのがルアー用・プラグ用のフックなのです。
貫通性とコンタクト性の両立
アプローチアングルを小さくしようとすれば、設計上はフックポイントをアイに向けていく、もしくはシャンクを長くしていくことになりますが、殊にプラグルアー用フックにおいてこれらの設計はNGに繋がります。
プラグ用のルアー、殊にストリームミノーイング用フックには高いコンタクト性が求められます。
ほんの一瞬、すごいスピードでギラっと反転するヤマメのコンタクトに対して、フックポイントが魚の口元に接触しなければ魚をキャッチには繋がりませんが、その初期のコンタクト性、実は100%『フックと魚任せ』なんです。
これを前提としてフック形状を考えた場合、極端に内側を向いたフックポイントでは魚にコンタクトすることは難しいですし、極端なロングシャンクではプラグからポイントが離れすぎて、口元にフッキングさせることは難しく、仮に刺さったとしてもスレ掛りが多発してしまうことでしょうし、ルアー内でフック同士が絡んだり、エビと呼ばれるフックによるライン拾いなどのトラブルにも繋がってしまいます。
高い貫通性(≒フッキング性能)を維持しつつ、高いコンタクト性を持たせたフック、それがトラウティントレブルなのです。

カーブドポイント&ショートシャンク
トラウティントレブルの形状的特徴を端的に言えば『ショートシャンク&カーブドポイント』ですが、その『ショート』『カーブ』の程度はやはりフィールドに答えを求めるしかありません。
先述のような机上の設計理論に基づき試作されたサンプルを、TIMONプロスタッフによる長期にわたる膨大なフィールドワークにより、このフックの理論の実証がなされ、今回の設計に結び付いたのです。
最高スペック素材
ジャッカルフックはこの素材無くしては設計できない最高スペックの素材、PSM(プロスペックメタル)という釣り針専用マテリアルを採用することにより、硬いながらも靭性のあるトレブルに仕上げています。
そこにPTFE Armorという地球上で最も摩擦係数の低い樹脂を採用することにより、極上の滑りでスムーズなフックセットを可能にします。


細部へのこだわり
アイの大きさは、ストリームで使用されるスプリットリングの最大サイズである#2がぎりぎり装着できる大きさに設計しています。
これによりルアーアクションを妨げない範囲で不必要なフックの自由度を減らし、ルアーのスイミングバランス向上に一役買っています。
また、外観上の違和感を少なくし、ライブリーなルックスにこだわっています。
材料は細いように感じますが、フックの大きさと太さのバランスで言えば、決して細いフックではなく、レギュラー~ヘビー寄りのバランスになっています。
不意の大物にも伸ばされにくく、無理なランディングにもしっかりと追従してくれます。
また、バーブレスフックはバーブドフックに比べ、熱処理の具合を硬めに出来るという特徴があります。(バーブの彫り込み部分がないため、その部分での破断の恐れがなくなるから)
硬めの熱処理のフックはフックポイントの先端も硬く、新品時の鋭さが持続しやすいというメリットがあります。硬すぎてしまっては折れてしまいますが、先述のやや太めのバランスも相まって強度と鋭さの持久力を備えたフックです。
新たなるターゲットへの展開
ヤマメ・アマゴといった日本のストリームトラウト専用モデルとして開発・商品化されたトラウティントレブルBLですが、発売以降、メバルのプラグフィシングにも非常に効果的とのレポートが数多く届いております。
使用されるプラグのサイズが同等ということもありますが、ヤマメ同様にバイトが浅くプラグでのフッキングが難しい対象魚の一種とも言えます。
このトラウティントレブルBLを一度お使いいただければ、ただ単にプラグに合ったサイズのトレブルフックを装着すればよいという考え方は払拭され、ターゲットによってフックのデザインを変えることで、釣果が変わることを体感いただけるかと思います。