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コラム

自分の釣りを出し切った、その先の頂点。藤田夏輝が語るバサーオールスタークラシック初出場・初優勝

Basser Allstar Classic 2026で、初出場にして優勝を果たした藤田夏輝プロ。

初日を首位で折り返し、最終日も最後の最後まで魚を追い続けてつかんだタイトル。その2日間には、練習で見つけた確信も、思い描いていた状況が崩れていく苦しさもありました。

何を見て、何を考え、次の一手を選んでいたのか。そして、その挑戦を支えていたのはどんな存在だったのか。大会を終えた夏輝プロに、じっくりと振り返ってもらいました。

「伝える側」から「戦う側」へ。初めて選手として立ったバサーオールスタークラシック

これまで夏輝プロにとって、バサーオールスタークラシックは選手をサポートし、ジャッカルブースでファンの皆さんを迎える場所でした。

弟・京弥プロのサポートや、ブースでの製品紹介。バスフィッシングの楽しさや、自分たちが携わる製品への思いを伝える立場で、この大会に関わってきました。

「僕にとってのバサクラは、ファンの皆さんとの交流の場であったり、製品やその思いを伝える場所だったんです」

何度も会場を訪れていても、選手として迎える大会は今回が初めて。その胸にあったのは、まず自分の持つ力を出してみたいという思いでした。

「初めてだったので、何度も出て悔しい思いをしてきたから優勝したい、という感じではなくて。やれるだけ、自分の最高のパフォーマンスを見せようという気持ちでした」

いつもとは異なる立場で立った、なじみのある舞台。そこから夏輝プロの2日間が始まりました。

冷たい北風のあと、バスはどこへ行くのか

今回の試合を組み立てるうえで、大きなきっかけになったのが、練習期間中に吹いた冷たい北風でした。

夏輝プロが感じたのは、秋から冬へ季節が進むタイミング。その変化に対して、魚がどう動くのかを考えていました。

広い霞ヶ浦では、強風によって大きな波が立ち、底の泥が巻き上がって水が濁ることがあります。冷たい風による水温の低下も重なる中、本湖にいたバスはどこへ移動するのか。

「本湖が底荒れしたり濁ったりすると、バスにとっても過ごしづらくなる。だったら、流入河川の入口付近が避難場所になっているんじゃないかと考えました」

一方で、寒さが増す時期には、川の上流にいたバスが下ってくる可能性もある。本湖から入ってくる魚と、上流から下がってくる魚。その両方が重なる場所を探す考えでした。

その仮説をもとに、練習の最終日は複数の流入河川を回りました。そこで見つけたのが、今回のメインエリアとなる清明川です。

「清明川だけ、ものすごくバスがいたんです。雰囲気があるなと思って釣りをしたら、すぐに良い魚が釣れて。別の釣り方でも大きい魚が釣れた。周りを見てもバスがいて、ここは相当なポテンシャルがあるなと思いました」

練習の最後に見つけた、優勝を狙える場所。直近の状況に合っているという感触を得て、初日へ向けた準備を進めました。

練習で釣れた方法も、そのままでは通用しない

初日は、そのエリア選びが結果につながりました。ただし、練習で釣れたルアーを投げれば同じように釣れる、という展開ではありませんでした。

練習では、ストラクチャーにタイトに付く魚に対し、シャッドを当てるように通すことで反応を得ていました。しかし試合初日の朝、夏輝プロは冷え込み気温の違いを感じます。

「少し暖かい朝だったので、ちょっと違うかもしれないなと思ったんです」

魚は同じエリアにいても、ストラクチャーにぴったり付いているとは限らない。わずかに離れ、中層に浮いている魚に対しては、同じコースを通しても反応が変わります。

そこで必要だと考えたのが、魚のいる位置で、よりゆっくりと誘うこと。その選択が、ダウンショットでした。

「中層で、もっとゆっくり誘えるものは何だろうと考えたんです。そのときは、それが合ったということですね」

釣果だけを見れば、使用したルアーに目が向きます。しかし夏輝プロが重視していたのは、そのルアーを選ぶまでの観察と判断でした。

「毎日、状況は変わります。その日のバスの状況に合わせて、ルアーを選んでいく。バスを一番に考えないといけないんです」

寒ければストラクチャーに寄り、暖かくなれば少し離れたり、泳ぎ始めたりする。その小さな違いに対して、ルアーや誘い方を合わせていく。

長く練習に入っていても、試合直前に天候が変われば展開は変わる。練習で得た情報を持ちながら、その日の魚を見て対応すること。その姿勢が、初日の釣りにも表れていました。

首位で迎えた初日の終盤。翌日のために探した、もう一つの可能性

初日、清明川で釣果を重ねた夏輝プロは、会場近くへ戻ってから利根川で別の展開を探っていました。

「もし厳しくなったときのために、ほかも見ておこうと思ったんです」

そこで狙ったのがテトラ帯でした。バスがいる可能性を感じながら探っていくと、ルアーに付いてくる魚を発見します。

しかし、追ってはきても食わない。複数のルアーや誘い方を試しても、キャッチには至りませんでした。

そこで手にしたのが、ヤミィ4.5のネコリグです。

「僕、ヤミィが大好きなんです。そのバスにフォールさせたら、しっかり追っていって。ボトムに着いてから誘ったら食ってくれたんです」

その反応から、どう狙えば食わせられるのかが見えてきました。

初日最後の1尾は、ウエイトの入れ替えにはつながりませんでした。それでも、翌日のために残ったものは大きかったといいます。

「その場所でバスを狙えれば、食わせられるという自信がありました」

初日の首位を支えたメインエリア。そして、状況が崩れたときに頼れる別の選択肢。この両方を持って、最終日を迎えました。

想定していた魚がいない。最終日に続いた苦しい時間

初日と同じような展開にはならない。それを強く感じたのが、最終日の清明川でした。

北風による荒れから時間がたち、本湖の水の状態は回復へ向かっていたと夏輝プロは捉えています。さらに初日の暖かさもあり、魚が移動した可能性を考えていました。

「本湖がきれいになって、水温も上がれば、そちらへ出ていく魚もいる。川の中でも上流へ動く魚がいると思うんです。固まっていた魚が散って、狙いづらくなっていました」

釣りを続ける中で、前日とは魚の量が違うと感じる。それでも、移動先をどうするのか、どこまで粘るのかを決めなければなりません。

練習で魚を釣っていた別の川へ向かうことも考えました。しかし、移動を考えたタイミングでの周囲の状況もあり、引き返して、もう一度清明川をやり直す判断をします。

そこで、狙っていたスポットに入ってきたバスを見つけ、ようやく最初の1尾をキャッチしました。

待望の魚でしたが、それで安心できたわけではありません。

「そんなに大きい魚ではなかったので、これ1本ではまだ足りないと思っていました。トッププロが集まる大会なので、これでは追い抜かれると思っていて」

競技中、選手は他選手の釣果や暫定順位を把握していません。見ている側には順位の変動が分かっていても、水上の夏輝プロは、自分の魚だけを見て次の判断を重ねていました。

しかも、清明川は会場からおよそ1時間と長い移動時間を要するエリアです。往復の時間を使ってでも、ここなら釣れると考えて選んだ場所。その期待が崩れていく中での釣りは、精神的にも苦しいものでした。

「かなり厳しかったです。もう終わったかもしれない、というくらいの気持ちでした」

最後に頼ったのは、初日に自分で確かめた手応え

最初の1尾を手にしたあとも、状況は好転しませんでした。

そこで夏輝プロは、初日の終わりに手応えを得ていた利根川へ戻ることを決めます。

「初日に、バスを狙えれば食わせられるという感触があったので、戻りました」

残された時間は限られていました。最初の1尾だけで勝てるとは思えない。もう1尾が必要だという気持ちで、最後まで集中して魚を探します。

そして終了間際、テトラ帯で見つけたバスを、ヤミィ4.5のネコリグでキャッチ。800gの1尾を加えて帰着しました。

「初日にウエイトを稼げた中で、厳しくなったときのために別の場所を見て、釣り方を見つけておけた。それが2日目につながりました」

初日のうちに確かめていたからこそ、苦しい状況でも戻る判断ができた。そこで得た自信が、最後の1尾を狙い切る力になりました。

2日間の結果の裏には、エリアの選択、魚の反応に合わせた調整、そして次の展開への準備がありました。

忙しい準備の中でも、自分を気に掛けてくれた人たち

今回の大会で心に残ったことを聞くと、夏輝プロはジャッカルのスタッフとのやり取りを挙げてくれました。

これまでは、自身もブースを手伝う側にいたからこそ、準備の大変さはよく知っています。早朝から動き、来場者を迎えるために準備する。その忙しい時間にも、スタッフは選手として出場する夏輝プロを気に掛けていました。

「足りないものはないかとか、どうですかとか。特別な用事があるわけではなくても、話し掛けに来てくれたのがうれしかったですね」

ボートを準備しているマリーナで、様子を見に来てくれる。自分たちの仕事を進めながら、必要なことがないか声を掛けてくれる。

大きな出来事だけでなく、そうした一つひとつの気遣いが、安心して大会に臨める環境につながっていました。

「皆さんのおかげで、不備なく、全力で戦えたと思っています」

久しぶりに同じ大会で交わした、いつもの釣りの話

家族も、例年バサーオールスタークラシック会場へ応援に来てくれています。

今回、夏輝プロにとって特別だったことの一つが、アメリカを主戦場とする京弥プロと、久しぶりに同じ大会で戦えたことでした。

大会中に交わすのは、日々変化する状況や、ほかの選手の様子についての話。ただし、釣り方や場所まで詳しく話すことはありません。

「そこまで話したら、面白くないので」

互いに選手として競いながらも、釣りの話をする時間は、昔から変わらない楽しさがあったといいます。

「今日の状況はこうだったね、とか。昔からしていた、そういう話が久しぶりにできて楽しかったですね。また一緒に大会に出たいです」

釣りの原点には、父の存在がありました。幼い頃から父に釣りを教わり、3人で出掛けていたそうです。

京弥プロも、昔からどうすればバスを食わせられるのかを考えていた。その時間を共有してきた相手と、再び同じ舞台で戦う。今回のバサーオールスタークラシックには、そんな楽しさもありました。

最後まで心を切らさずにいられたのは、応援があったから

これからの目標と、応援してくださった皆さんへの思いを聞くと、夏輝プロは早朝の会場の光景を振り返りました。

選手を送り出すために、朝早くから集まってくれる人たち。前日から滞在し、スタートを見届けてくれる人たち。

「ブースを準備するスタッフよりも早く来てくださっている方もいるんです。そこまでして選手を送り出してくれる。その気持ちが、本当にすごいなと思います」

「頑張ってね」という声。初日首位で迎えた2日目には、さらに勢いをつけてほしいという応援も届きました。

大勢の期待を背負う緊張感はある。それでも、その声は、苦しいときに気持ちを支えてくれる力になっていました。

「頑張らなきゃ、という気持ちになるんです。すごく力になりましたし、苦しい時間も心が持ちました」

最後の1尾を手にするまで、気持ちを切らさずに釣り続けられた。その背景にも、送り出してくれた皆さんの存在があったといいます。

「最後の1尾も、応援のおかげだと思っています。心が折れずに最後までできたのは、集まってくださった皆さんの温かい気持ちのおかげです」

「やってきたことが実を結んだ」。優勝の先に見据えるもの

初出場での優勝。その結果を夏輝プロ自身は、どのように受け止めているのでしょうか。

「全力を出せたし、自分のパフォーマンスを発揮できたなと思っています。これまでやってきたことが実を結んだんだな、自分の釣りが通用するんだなと」

普段は異なる団体や、アメリカのトーナメントで戦う選手たちが、同じ舞台に集まるバサーオールスタークラシック。そうした選手たちと競い合う機会そのものが貴重であり、その中で優勝できたことに大きな喜びを感じています。

そして、次の目標も明確です。

「優勝したからには、また来年も優勝したいです。上位に居続けて、ライブ配信でも自分の釣りを見てもらいたいですね」

初めて選手として立った舞台で、自分の釣りを出し切った2日間。

結果につながった判断も、思いどおりにいかなかった時間も、最後まで届いていた応援も。そのすべてを次への力に変え、藤田夏輝プロは再び頂点を目指します。

会場やライブ配信を通じて温かいご声援をお送りいただいた皆さま、誠にありがとうございました。今後も藤田夏輝プロへの応援をよろしくお願いいたします。